自己紹介文

☆☆西荻窪のライブハウス、ミントンハウスのマスター福元氏のブログより転載させていただきました。☆☆


水木しげるのマンガでもよく登場する、昔々からの言い伝え、妖怪のドン“ぬらりひょん”を覚えていますか?いついかなる時、いかなる場所にでも必ず現れ、必ずその場の主役に躍り出る、愛すべき妖怪の大物であります。


ジャズ界にもそんな人物がおります。その昔、デューク・エリントン楽団とカウント・ベイシー楽団、その両方の超老舗バンドに、ちゃっかり股にかけて在団した経歴のジャズマンに、クラーク・テリー(tp)がおります。この陽気で、人懐こい、ずば抜けたテクニックとパワーを持つ大物スターは、かのマイルス・デイビスにトランペットの手ほどきをしたことでも有名であります。


我国トラッド・ジャズ界に目を向けると、クラーク・テリーのような大物“ぬらりひょん”がやはり一人おりました。
私共が生息する、妖怪の棲むクラシックジャズ界では誰知らぬ者はいない、牢名主のような大御所的存在の高橋三雄氏であります。高橋三雄氏は親しい人たちからは“アンパンさん”と呼ばれて慕われております。


この高橋三雄氏はアルトサックスの名手として我ら魔界の津々浦々までその名声はとどろいております。クラリネットもよく吹奏しますが、やはりこの人はアルトサックスが最高であります。ジョニー・ホッジスを崇拝し、ベニー・カーターを愛する高橋三雄氏は、ジョニー・ホッジスの豊潤にして典雅、ベニー・カーターの端正にして華麗な音色と演奏を常に範として、ひたすら修練を重ね、独自の境地を切り拓いて今日に至り、その情熱的なプレイは、聴き手の我らを感動と興奮のるつぼに落とし込んでくれます。


かつてニューオリンズジャズ界の老舗バンド、ニューオリンズ・ラスカルズとラグ・ピッカーズの両方を渡り歩き、華麗なプレイでその存在を世間に知らしめた高橋三雄氏は、還暦をとうに過ぎた今でもまったく衰えを知らず、ますますパワーアップ、円熟味も増して、精力的に各地で演奏活動をしております。精力絶倫の感があるアルトの艶っぽい音色に、私はひそかにこの人の辞書には“枯渇”という言葉はないなぁ、ひょっとして“色と音”両道まだまだ生臭いのでは、などとふとどきな妄想にかられております。そういえば当店に出演依頼をすると、よく女性ピアニストを指名するのはひょっとして、まだ生臭い証拠、いやいや真摯にジャズに打ち込む高橋三雄氏のこと、とんだ邪推を、ご無礼の段、平にご容赦。


私の見解では、ジョニー・ホッジス、ベニー・カーターよりも同時代のアルト三羽烏の一人、ウィリー・スミスの情熱的なプレイのほうが高橋三雄氏には当てはまるような気がします。(1953年、JATPで来日し、新橋の芸妓を片っ端からアルトでしびれさせ、遊びまくって帰国したウィリー・スミスですが、それと高橋三雄氏のプレイとは何の関係もありません、念のため)実際、高橋三雄氏のアルトプレイは、我ら市井の俗物でもはっきりと“これはすごいや”とすぐ納得できるほど解りやすく、説得力ある演奏で、トラッド・ジャズ界のアルトの至宝となっております。


長い長いキャリアを誇り、伝説の“ぬらりひょん”のように、どこにでも登場する、神出鬼没の行動派、主役を食ってしまうほどのパワーとハートフルなアルトの冴えは、天下一品、“絶倫街道まっしぐら”名人、上手の名をほしいままにしております。だんだん風格が牢名主の様相を呈しても、後進の指導には熱心で、高橋三雄氏に薫陶を受け、彼を目標とする若き俊英たちが続々と登場してきており、我ら魔界の未来は、何やら明るい日差しが差し込んでおります。